Virtual Fate Map of Drosophila melanogaster "発生学"というのは簡単に言うと 、"どうして卵が自発的に変化してハエやヒトなどの複雑な生き物を作り出すことができるのか?"ということを研究する分野です。そのような"自発的な変化"を"発生"と呼ぶわけですが、現在では発生に関わる"遺伝子"の機能を調べることにより、発生の仕組みを理解するというような研究が主流です。発生に関与する遺伝子は基本的にショウジョウバエとヒトを含めた高等生物の間で共通しているので、ハエを用いて研究することにより、ヒトを含めた生物全般の発生の機構を理解できると考えられています。 さらに、ショウジョウバエというのは高校の生物の教科書でも紹介されるくらい、昔から研究に用いられてきました。現在ではハエを用いた遺伝子組み換えの技術がものすごく発達しているので、他の生物を使った研究に比べて様々な利点があります。 ショウジョウバエの成虫の形は幼虫のそれとは全く異なります。成虫の翅(ハネ)や肢(アシ)が幼虫の時にどうなっているか考えたことはありますか?実は成虫の外部構造すべてはとても細かい部品に分割された状態で幼虫の体内に埋め込まれています。これらの部品が蛹の時期に大幅に成長し、最終的に成虫の構造を形作ります。例えば成虫の翅は幼虫体内の翅原基という組織からできます。では、幼虫の時の体の構造はどうなってしまうのか?実は蛹の時期にほとんど全て溶けて無くなってしまうのです。不思議ですねぇ。 下の画像では上が成虫で下が幼虫です。マウスのポインタを成虫の眼(複眼)の上に持って行ってください。そうすると、成虫の眼が赤くなると同時に幼虫の一部も赤くなったでしょう?この部分が複眼原基と呼ばれ、将来成虫の複眼になる部分です。同様に、成虫や幼虫の体の他の部分にポインタを近づけてみると、成虫と幼虫の対応する部分がわかると思います。 |