manubar top

 
 

 幼虫期に形成された同心円ゾーンは蛹の時期に崩壊してバラバラになってしまいます。一度形成された同心円構造をわざわざ壊すことにはどのような生物学的な意義があるのでしょうか?この問題はメダラの発生を理解する上での最大の"謎"かもしれません。細胞移動を伴った神経回路形成はほ乳類の中枢神経経においてはよく見られる現象ですが、ハエにおいてはこれまで知られていませんでした。現時点ではメダラ神経の細胞移動を制御するメカニズムもその生物学的な意義も分かっていませんが、この研究を進めることによってハエからほ乳類にまで通じる重要な知見が得られるかも知れません。

 

   

 幼虫期に形成された同心円ゾーンは蛹になってもしばらくの間はほぼ同様に維持されていますが、蛹になって12時間後(12hr APF)の時点から同心円ゾーンが少しずつ乱れ始め、24時間後(24hr APF)の時点ではほぼ完全にバラバラになってしまいます。これは成虫においても同じです。この時、各転写因子の発現は強く一定しているので、メダラ神経細胞は転写因子の発現を変化させずに細胞移動していると考えられます。この考えは他の様々な実験によって支持されています。
 8hr APFの時点で内側にあった緑の細胞は成虫においては外側にも見られます。また、8hr APFの時点で外側にあった青の細胞は成虫においてはうちがわにも見られます。このことからメダラ神経細胞は放射方向、つまり内側-外側の方向に移動していると考えることができます。


 
 
   
 

 幼虫期においては脳の表面にある神経幹細胞が脳の内側に向かって一直線上にメダラ神経細胞を生み出します(左上)。したがって、一度神経幹細胞がGFPでラベルされるとその子孫である神経細胞群が放射状・直線状にGFPでラベルされます(右上)。このような放射状の配置は蛹になって12時間(12hr APF: 左下)の段階でも見られますが、24時間の蛹(24hr APF: 右下)では直線状の配置は全く見られず、GFP陽性神経細胞どうしはバラバラに配置しているように見えます。
 これらの結果から、メダラ神経細胞は蛹になって12〜24時間の間に互いの相対的な位置関係を劇的に変化させており、放射方向だけではなくそれとは直交する接線方向にも細胞移動していると考えられます。


 

   
 

 メダラ神経細胞の移動はランダムであり、何の法則性もないかのように見えます。本当にそうでしょうか?4種の転写因子のうちの1つBshを発現する神経細胞に注目すると、あるパターンに従って細胞が移動していることがわかります。
 左上の図で紫、他の写真では白で表した細胞がBsh発現細胞で、幼虫期および12時間の蛹(12hr APF)では脳の内側に位置しています。しかしその後次第に外側に向かって移動していき、24時間の蛹(24hr APF)および成虫においては脳の最も外側に位置します。従って、Bsh陽性細胞は脳の内側から外側に向かって移動するということがわかります。他の神経細胞についても、神経細胞のタイプ毎に固有の移動パターンを示すことが他の実験から示唆されています。

Hasegawa, E., Kitada, Y., Kaido, M., Takayama, R., Awasaki, T., Tabata, T. and Sato, M.
Concentric zones, cell migration and neuronal circuits in the Drosophila visual center.

Development (2011) 138, 983-993 (Open Acess PDF file)

 
 
 


 


   
  金沢大学 新学術創成研究機構